どうもregunです。最近自分のコートを先輩にメルカリで売られそうになりました。
この記事はUECDTM Advent Calender 2022 11日目の記事です。
10日目のおもてりの記事がためになりすぎたのでためになっています。
今回は真面目な記事で行くつもりなので、滑稽な人間を笑いに来た人は前の4日目の記事に戻ってください。建設的なものを求めに来た人も前の記事に戻って、無為なものへの価値を見出してください。
大切なものは目に見えましたか? では本題にいきます。
今回、いわゆる自分語り系記事です。
MasaDoくんがかなりの物量のものを投げていたので、少し気がひけていますが頑張ります。
自分はそんなに肩が強くないので、ちょこちょこと小出しでいきます。
- 初めて自分で納得する曲ができました
- 曲の構想は案外コンセプトレベル
- やっぱり出だしからコードをキモくしたい
- 依頼する金がないので女性ボーカルを自給自足
- 編曲は同系統の曲をめちゃくちゃインストール
- 誰かに自分の曲を楽曲分析してもらいたい!
※本記事中に埋め込まれているwaveファイルの使用は禁止でお願いします。
初めて自分で納得する曲ができました
M3という同人イベントをご存じでしょうか?
端的に説明すると音楽版のコミケみたいなものです。主にCDが売られていますが、音に関連するメディアであればなんでもござれという感じです。
そのM3が今年の10月にも無事開催されていました。
自分はUECDTMのアルバムCDに曲を出させていただいたのですが、嬉しいことにトップバッターを務めさていただきました。やったー!
普段、曲を出すと1日程度で、早ければ数秒で「なんか、今回の曲微妙だな……」とディプレッションに入ってしまうのですが、今回の曲は初めてかなり納得がいきました。
まだ聴いていない方はこちら↓からどうぞ。(今回はこの曲についてぺらつく記事なので……どうか聴いてください……
スパムが大量に湧いていたので一旦削除して公開し直しました。つらいね。
初日本語の歌ものです。作詞もボーカル(!)も自分です。いいでしょ。
今日はこの曲をつくるまでの過程を大雑把に話していこうと思います。
なんと記事の最後にはスペシャルゲストからの寄稿もあります! お楽しみに。
曲の構想は案外コンセプトレベル
今回のUECDTMのアルバムは記念すべき10枚目のアルバムでした! おめでとう!
そこでやはり自分の全力をぶつけたいという気持ちもあり、普段だったらかなり遊びを入れてしまうところを極力抑えるようにしました。逆に今まで遊び過ぎたのかもしれない……。
また、記念すべきアルバムに曲を入れるのであればアンセム的な曲がいいなと軽く考えていました。クラブの最後にかかってみんなで大合唱する的なやつ。
やっぱり歌ものは強いし、強いです。
あと以前英語で歌ものをつくっていましたが、身内で好かれて欲しかったので日本語で作詞することにしました。
上記にあげた曲を聴くと、一番盛り上がるサビは複雑でないメロディでかつ歌詞もすっと入ってきやすいという特徴を感じたのでこれらを意識することにしました。
また、明るくてカワイイというのも必須要素。オタクなので。
これらを踏まえ、今回のアルバムテーマである「冒険・旅路」と絡めるために、作り溜めている歌詞ストックから「テラフォーミング」のテーマのものを引っぱってきました。正直無理やり感あります。
歌詞は以下のリンクから参照してください。
terafo_lyric.pdf - Google ドライブ
文字として見たときには当然分かりますが、音だけで聴いたときに正しく変換できるかという点にかなり気を配りました。同音異義語の候補はコンテキストを踏まえればないはず……。
また、サビにおける最高音は1フレーズの後半に来ると歌ってて気持ちいいので、それを見越してピークとなる「ヤワじゃない」を持ってきています。
全体としてはテラフォーミングをラブコメ的な文脈に乗せて歌詞をつくりました。
恋を扱う歌詞で直に書いてしまうとクサさが目立ってしまうので、関係をなんとか進めようとする一番いい時期にクローズアップしています。
ツンとしているキャラにちょっかいを出して気を引くような感じです。
また、テラフォーミング繋がりの宇宙や物理っぽい単語を散りばめ、直に表現しないための暗喩に利用しました。
というわけでアンセム的な明るくてカワイイ歌ものをつくり始めました。
やっぱり出だしからコードをキモくしたい
出だしからうおっとなる曲としてパッと思いつくのは坂本真綾の『Be mine!』です。
ド頭から分数augをかまして惹きつけてきます。最高。
やはりイントロからこれは何かがヤバいと思わせれば、なんとか聴いてくれる人が残ってくれる気がします。
ただ、自分は音楽理論ニワカなのでこんなにきれいなコード進行は組めません。
しょうがないのでそのコードから得られる情動反応で組み合わせていつもコード進行を組んでいます。augは「ん~~~?」、sus4は「お~~~↑」 みたいな感じで。ふざけているわけではなく本当にそれぐらいの感覚で扱っています。ちゃんと勉強しようとは常々思うんですが、なんとかなっちゃってるせいでしないがち。
というわけでイントロのコード進行はこんな感じです。
作曲段階では最近はいつもピアノでやってます。
上記の曲に倣って分数aug(D#aug/G#)を使いました。最後のコードはsus4(D#7sus4)で「どうなっちゃうんだ~?」みたいな感覚を起こそうとしています。
4つ目のコードは、1度で衝突しているノート(アボイドノート)があるのがパッと見てわかると思います。が、濁りはうまみ的なノリで入れてます。あと次のコードへの予備動作的な。聴感よければいいんです主義でつくっているので本当にいろいろな方からいろいろ言われそうです。
次のAメロまでの間奏はみんな大好きボーカルチョップです。
録ったボーカル(このあとのセクションで話します)のオーディオファイルを8分で刻んでサンプラーにぶち込み、テキトーに鳴らして化学反応を待ちます。
この世で一番楽しい探求作業です。候補がいくつか出ると思うのでリージョンをちゃんと控えときます。
チョップ明けにAメロがやってきます。間奏の四つ打ちで脳死になってるところをコードの刻みで目覚めさせます。
ここでも終わりにsus4使ってます。sus4愛してる。
Aメロ後半は個人的神がかりポイントです。
ヤバくない?
や、よく聴くと言われてしまえばそうなんですけど、よく聴くやつをまさかフィーリングで組めるとは思わなかったのでできたときはめちゃくちゃ興奮してました。
正直どうやって組んだか思い出せないです。理論わからん定期。
次にBメロです。
sus2も大好き。愛してます。
サビに向けて解放していく準備をしていく感じです。
ついでに転調もしてます。
次にサビです。
いいね。ついでに転調して転調してます。
もう正直話すことがないです。このときはとりあえずいい曲をつくろうという気持ちだけで打ち込んでいました。いずれこういうのも理詰めでやって、人に説明できるようになりたいですね。
依頼する金がないので女性ボーカルを自給自足
さて、ボーカルが女声に聴こえることに皆さんお気づきでしょうか?
feat. erunとあるのでこの方に依頼したのかなと思われそうですが、違います。
ちなみにerunはregunの別の姿です
— regun (@regun46m) 2022年10月23日
らんまみたいな感じで喉にエフェクトをぶっ挿すと変身します
そう。もう一人の自分ってやつです。
Nectar 3を使ってあれこれすることでerunに切り替わることになってます。
制作期間が3日ほどしかなかったので、ラボに行く前にレコーディングを行っていました。編曲と同時並行でしたね……
オケが全然できていない段階の音で想像して歌わないといけなかったので、絵コンテ段階で収録している声優さんみたいな感じでした。
マイクもいいものを使っているとはいえず、本当はノイズ処理も細かく行いたかったのですがRX 8のプラグイン直挿しで済ませちゃっています。
テイク数もそんなに取れないので、ある程度ピッチ合ってたらmelodyneでガシガシ弄ってました。
あとRVoxは本当に神です。
ありがとうwaves。今度余裕あったらhorizonバンドルとか買います。
ダブラーで音像広げて、トランジェントマスターでアタックを上げるとそこそこ聴ける感じになります。
ただだいぶまだボーカルミックスの素人感はかなりあります。今後もう少しツールや知識を揃えて磨きたいです。
編曲は同系統の曲をめちゃくちゃインストール
さて、作曲が終わってもかなりキツイのが編曲です。
編曲しながら作曲やるといくらか解消されるのですが、最近は完全に分けて作業しているので、ただピアノが鳴っているところからどんな音色を使ってどう音を分担させるのか考えなきゃならなくてキツいです。
そこで必要になるのが大量のインストールとシャワーです。
前々から今回のM3には絶対にポップスを出したいという気持ちだったので以下のリストのものを聴きまくっていました。
- 2022年春アニメOPとED全曲
- 2022年夏アニメOPとED全曲
- 田中秀和公式プレイリスト
これは常々感じているのですが、消費を怠る人間が創作をできるとは思わないです。
創作を怠っている自分が言うのもなんですけど、消費を無駄に感じてやらないときほどI/Oが滞っている気がします。消費は無駄じゃないです。ガンガン消費していきましょう(自戒)。
制作期間中には、とりわけ田中秀和公式プレイリストを通学や帰宅中に鬼ほど聴いていました。ブラス、FX、キメの扱いを特に集中してインストールしようとしてました。
ただ、インプットするだけではアウトプットはできません。(少なくとも自分は)
自分の曲作りにどう当てはめていくかを考えるプロセスが必要になります。
そんなときに役立つのがシャワーです。ガチです。
自分は毎朝シャワーを浴びているので、いわばルーティンとなっています。
あの粒の触覚刺激を受けることで、なんかいい感じに考えがまとまります。
メロづくりも大体シャワーのおかげです。そろそろクレジットに加えたほうがいいかもしれない。
また、思いついたものはすぐにメモするようにしています。風呂出たら忘れちゃった! を何度も経験したことがあるので。
最近はジップロックにスマホを入れて持ち込んでいるので、その心配はなくなりました。思いついたメロとかはその場でボイスメモ。
これらのプロセスを通して編曲していきました。
例えばAメロ後半。
これを、
こうしました。個人的にこのパートは過去一最高の編曲ができたと思っています。
あと余談ですが、10thアルバムということもあり「これアレじゃん!」みたいな身内が思わずニヤッとするものを盛り込もうとしていました。(おもてりに聞いてみたけど気づかんと言われました……自己満…ってコト!?)
いれた場所はギターソロです。自分が初めて作った曲である『Opportunity』のフレーズをモチーフに作っています。探してみてね。
自分で聴くときはここで毎回感情になってます。
誰かに自分の曲を楽曲分析してもらいたい!
さて、語りたいことは語れたのでここで記事を終わらせてしまうのもいいのですが、やはり自分語りは所詮自己満足です。空虚な感じが残ります。
そこでふと思い出したのが、楽曲分析です。
YouTubeを漁っていると自分なんかよりも遥かに音楽を理解している人たちが、素晴らしい音楽をめちゃくちゃ丁寧に分析しているのをよく見かけます。
見てもちゃんと理解できないことが多いのですが、自分の楽曲を分析された人にとってはさぞかし気持ちのいいことでしょう。
あれを、やりたい!!!!!
というわけで、全幅の信頼を置いているぱみくんに楽曲分析を依頼しました。
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こんにちは、ぱみ(pamiyummy@twitter)です。今回ありがたいことにregun君から楽曲分析を依頼されたので、「テラフォテキカンケイコウチク」を分析して感想を述べていきます。全部筆者の主観であり、作曲者の意図とは異なる可能性があることにご留意ください。
最初にこの曲を聴いて感じたことを一言で表すと「明るい狂気」です。全体を通して矩形波のような音色のコードが使われており、この倍音成分がある種の不安定感を演出しています。またボーカルに注目すると、サビなど局所的に歌い出しを早くすることで気持ちが溢れ出る様子を表現していたり、スケールには無い音を一部メロディに混ぜることで独特な響きを演出したりしています。これらの要素を長調の四つ打ちエレクトロポップとして表現することで、歌詞にマッチする曲想を作り上げているのではないでしょうか。
歌詞は人間関係における苦悩を表現していると考えられます。
terafo_lyric.pdf - Google ドライブ
題名にある「テラフォ」をテラフォームと解釈すると、歌詞中に登場する「君」と地球、「私」とテラフォームの対象となる惑星を対応させて歌詞の意味を考えることができます。「私」は「君」の短気な性格に嫌気がさしつつその場しのぎで対処してきましたが、ついに「私」は耐えられず、言葉や態度という「隕石」を「君」に落とすことになります。「君」はそれに対していきりたち「私」はそれを見て笑いますが、この笑いには攻撃による快楽、どこかで関係構築を誤ってしまったことによる自暴自棄、侮蔑など、様々な意味が込められていそうです。そして最後の「幸せになるよ」という歌詞は、「私」が「君」と距離を置いて前を向いていると捉えることができます。
ここで歌詞の「作り変える」の目的語を考えます。「作り変える」という歌詞は曲のイントロと間奏前に登場します。個人的には前者は「私」、後者は「君」(の価値観、考え方)を「作り変える」と解釈しました。そうすると、最初は「私」を「作り変える」ことで「君」との関係の問題に対処しようとしたが、耐えられなくなって「君」に「隕石」を落とすことで「君」を「作り変え」ようとした、というストーリーを考えることができます。
このようにこの歌詞は、一時は気の合った相手との関係に亀裂が生じる過程の、相手に合わせる苦しみや、相手の嫌なところが見えてしまう苦しみなどを表現しているのではないでしょうか。
ハーモニーについて特筆すべき点は3つあります。
1つ目は、ブルーノートとミクソリディアンスケールを効果的に使用している点です。ブルーノートとはメジャースケールに対する♭3、♭5、♭7の音です。イントロのE♭Majorに登場するソ♭とレ♭の音はブルーノートであり、雰囲気を引き締め格好良くすると同時に気怠さを表現しています。
ミクソリディアンスケールとは、メジャースケールの7度の音を♭7に置き換えたスケールです。このスケールには♭7の音がある点でブルーノートと同様の効果がありますが、ブルーノート(スケール)に比べると♭3と♭5が無い分長調寄りの響きになり、より柔らかい印象を表現できます。このスケールはAメロに登場しており、「頑張る必要なんてないよね」という気怠げな歌詞とマッチしています。
2つ目は、オーギュメントコードとマイナーメジャーセブンスコードを効果的に使用している点です。Aメロ後半の「斥力が」と歌われる部分のコード進行はB♭9sus4→Gaug/A→A♭7となっていて、オーギュメントコードが登場していることが分かります。
特に今回のオーギュメントコードは、スラッシュコード型で偶成和音型のブラックアダーコード、すなわち、コードの構成音が移動する過程で偶然生じたブラックアダーコードであると解釈できます。これによりオーギュメントの響きが自然に組み込まれ、明るい狂気と強烈な解決感が表現されています。また、この後に登場するのがマイナーメジャーセブンスコードです。先程のコード進行に引き続き、…→A♭7→Cm7→B♭mM7→A♭/E♭→B♭11sus4という進行でAメロが終わります。独特な雰囲気を演出するマイナーメジャーセブンスコードに11度の音(ミ♭)をメロディとして乗せることで狂気さが加わり、「私を惹き付けているんだ」という歌詞を含みのあるものにしています。余談ですが、曲中で使用されているこのB♭mM7(11)というコードとそのボイシングがとても興味深かったので、いずれ使い方を模索したいなと思いました。
3つ目は、転調が多用されていて展開に飽きない点です。曲の構成と調を一緒に見ていくと、イントロ(E♭)→Aメロ(E♭)→Bメロ(A♭)→サビ(G♭→A♭)→イントロ(E♭)→間奏(E♭)→Cメロ(A)→サビ(G♭→A♭)→アウトロ(A♭)となっています(曲は終始長調なのでMajor表記を省略しています)。特にA♭とG♭の間の転調やE♭からAへの転調は、雰囲気が大きく変わって非常に効果的であると言えます。また、このE♭→A♭→G♭というのは五度圏の完全4度刻みの方向の動きであり、比較的暗い印象をもたらす進行である一方、G♭→A♭→E♭というのはそれと全く逆で、比較的明るい印象をもたらす進行です。この二つの対照的な進行を組み合わせていることも曲の雰囲気に影響を与えているかもしれません。
まだまだ分析すべき要素はありますが、以上で楽曲分析は終わりにします。ここまでガチで楽曲分析したのは初めてかもしれません。regun君の歌ものを聞いたのは今回が初めてでしたが、メッセージ性も強く細部も作りこまれていて、とても満足感のある良い曲でした。
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…………
すごすぎる………
読んでてめちゃくちゃ感動しました……。こんな事細かに意味性と音楽での表現のつながりを考察してくれて本当にありがたいです。
自分ではもうどう組んだか思い出せないAメロのコード進行や、転調の仕方も分析してくれてとても助かりました。
この文章届いたときはもうこれメインの記事にしようかと考えてました。
いろいろと自分語りしてしまってすみません……ありがとうございます……
というわけでテラフォテキカンケイコウチク、いい曲なのでぜひ何度も聴いてください! 何かの機会で流したときに歌ってくれるとなお嬉しいです!!
あとみんなも歌ものつくろう!!!!
次のアドカレは明日12日目。
TTYがスウェーデンでの日常を話してくれるみたいです。楽しみですね。